世界中の観光客から愛される家族経営の温もり「澤の屋 旅館」
住所:〒110-0001 東京都台東区谷中2-3-11 Googleマップ
アクセス:東京メトロ千代田線「根津駅」からどうぞ。
お問い合わせ:03-3822-2251
HP:http://www.sawanoya.com
谷中の住宅街の一角に、世界92ヵ国、19万人(2018年12月現在)もの旅行者を受け入れた有名な旅館があります。もしかしたら、日本人よりも海外の方のほうがよくご存知かもしれません。その旅館の名は「澤の屋 旅館」。外国人観光客を受け入れたホテルや旅館の先駆け的な存在のひとつです。
現在では、インバウンドビジネスという言葉は定着し落ち着きをみせていますが、澤の屋旅館さんは、そんな言葉がメディアに出るずっと前の1982年から海外観光客の需要に着目し経営を続けています。現在でも、お客様の約9割が海外観光客だそうです。
まちがあって、人がいて、宿がある
澤の屋旅館さんの人気の秘訣は「家族経営だからこそ感じられる温かさ、安心さ」が挙げられます。海外観光客を受け入れるということは、同時に様々な文化様式に対応することでもあり、ましては参考事例などない中で本当に難しいことだったのではないでしょうか。
2代目館主の澤功(さわいさお)さんは、どのようにして澤の屋を人気旅館にしていったのでしょうか。
澤さんは、昭和39年、澤の屋旅館の一人娘よねさん(奥さま)と結婚し養子となり澤の屋で働くようになりました。好景気の中では、修学旅行生や商用、観光のお客様も大勢いて旅館も活気に溢れていました。しかし、昭和45年の大阪万博が終わる頃から、宿泊者の数は一気に減り始め、昭和57年には三日間お客様の予約が入らなくなり廃業直前の状態になってしまったそうです。そんな状態になってはじめて、以前から「海外観光客を受け入れなさいよ」と声をかけてくれていたジャパニーズ・イン・グループの創始者矢島さんのやしま旅館を訪ねたそうです。
やしま旅館で見た光景は、澤さんの海外観光客受け入れへのネガティブな印象を一気に吹き飛ばしました。片言の英語で海外のお客様と接する矢島さん。澤の屋旅館と同じくらいの施設でもお客様で溢れ活気に満ちているやしま旅館。これなら自分たちもできるのでは!とすぐにグループに加入し、外国のお客様を受け入れたそうです。
海外のお客様も増え、軌道に乗ってきたある日のこと。フランス人の若い芸術家3人が長期滞在の予約をしてきました。はじめのうちは少々不満そうな態度だったお客様は、すぐに「この町が気に入った!」とご機嫌になり、結局、3か月間滞在されたそうです。彼らは毎日、毎夜、町に出かけ散策する日々を過ごしていて、母国から友人が来ると、まるで我が町かのように楽しそうに案内をしていました。その姿を見て、澤さんは、自分たちは朝食と宿泊を提供するだけで、それ以外のサービスは町のみなさんにお願いしようという考えが固まったそうです。
それから、旅館の周辺の地図を作成し、1軒1軒協力のお願いをしに廻ったそうです。当時はまだ海外観光客も少なかった時代。今では当たり前の英語版案内など無い店がほとんどでした。澤さんの活動や、近隣のお店の方々の努力の甲斐もあり、だんだんとその輪が広がっていったようです。
国内観光者向けの旅館。館内だけで完結する商いのため、はじめは町との繋がりは深くなかったそうです。しかし、町ぐるみで海外のお客様を対応していくとなると、住人、商店、旅館と横の繋がりも必ず必要になってきます。澤さんは、それまで入っていなかった町会にも入り地域の人たちと積極的に関わるようになりました。良い連鎖は続くもので、お祭りや町会イベントなど澤の屋旅館のお客様も受け入れられ、参加し楽しむようになっていったそうです。
楽しかった思い出、素晴らしい人、モノとの出会いなど、人間は他の人にも伝えたいという衝動にかられます。澤の屋旅館や谷中、谷根千で体験したことを伝える口コミ、レビューが世界に広がっていきました。世界最大の旅行口コミサイトのトリップアドバイザーでは殿堂入りを果たし、旅行ガイドブック大手のロンリープラネットでもいち早く取り上げられたそうです。
澤の屋旅館の奮闘模様は多くのメディアや本で紹介されていますので、ぜひチェックしてみてください!澤の屋旅館の功労者、澤功さんは2000年に”下町の外国人もてなしカリスマ”として国が指定する「観光カリスマ」に、2009年に「VISIT JAPAN大使」に選定されているんですよ!
澤の屋旅館さんの本
▶「ようこそ旅館 奮闘記」 http://www.sawanoya.com/yokosoryokan.html
▶Welcome to Sawanoya, Welcome to Japan(英語) http://www.sawanoya.com/book.html
▶「澤の屋旅館」はなぜ外国人に人気があるのか http://www.sawanoya.com/sawanoyahon3.htm
▶まんが澤の屋物 http://www.sawanoya.com/manga.html
澤の屋旅館の施設いろいろ
澤の屋旅館のお部屋、施設、設備を見せていただきました。
澤の屋旅館のおもてなし
旅館の中は清掃が行き届き、とても清潔で落ち着きのある空間になっています。また、館内各所に見られる和雑貨や生け花が良いアクセントになっていて外国からのお客様をもてなしてくれます。これらは全て、女将のよねさんのこだわり。よねさんのセンス・趣味で用意されているそうです。色々ある中から一部をご紹介します♪
谷中、谷根千への想い。澤の屋旅館の未来についてお聞きしました
「海外のお客様から、谷中はとてもいい町だとよく言われます。それはこの町には昔の下町風情と生活が残っているからかも知れません。互いをあまり干渉し過ぎず、外国人も特別扱いしない。そんな雰囲気が気に入られているのかも知れません。澤の屋旅館は、そんな町、そこで生活を営んでいる人、その両方があってはじめて成り立っています。澤の屋旅館には家族経営だからこそ成せる“家族の温かさ”が感じられる場所になっています。お客様からは、澤の屋はずっとこのままでいてくださいね、いつ来ても同じ顔ぶれで、家にいるようにくつろげるから来ているんですよと言われています」と澤功さんはおっしゃっていました。
今後、どのように旅館を運営していきたいですか?と澤新さんにお聞きしました。
「父の話にもあったように、お客様には今の澤の屋のスタイルを気に入っていただいております。変わらないこと。自分たちができるサービス、おもてなしを続けていくことが大事だと思っています」と答えをいただきました。
功さんの考えは、しっかりとご家族に伝わっているようです。
先日、谷中のHAGISOさんが運営するホテル「hanare」がグッドデザイン賞金賞を受賞しました。そのコンセプトは「まち全体を一つの大きなホテルに見立てることで 地域と一体になったホテル」というものです。
谷中、谷根千エリアでは、地域で一体となり物事に取り組むという事例が多く見られます。それによって町は活性化され、人が集まり、つながりが出てきます。そんな魅力的な町だからこそ観光客のみなさんもまた訪問したくなるのでしょうね。